日本の論点 2017-2018

シリーズ4作目。
毎年、年末年始にその年のまとめと翌年の展望をかねて読んでいる。
もっとも、メルマガやコラムなどで何度か読んでいるため新鮮さは少ないか。またこれまでの「日本の論点」と比較して、こじんまりとまとまった感がある。

世界的な右傾化(ポピュリズム)の流れの中、どのように生きるべきかを提言。

個人的には、トランプ旋風、ブレグジット(イギリスのEU離脱)などポピュリズムしていく世界への警鐘、グローバリズムの停滞、アベノミクスの矛盾、オバマ大統領の評価から東芝の不正会計問題などを興味深く読んだ。

P15
私はグローバリズムの最先端を観察し続けてきたが、経済がそちらの方向に進んでいるのは間違いない。しかしながら、グローバリズムというのは交通網や金融システム、通信やネットワークなどの技術によってもたらされた大きなトレンドであって、人間の精神がそこに追いついていないように感じる。

たとえばイギリスがEUに残留するメリットを示すデータはいくらでもある。しかし、そういうデータをきちんと説明できる政治家、あるいは思想家や哲学者がいない。

安倍首相もまったくグローバル経済を理解していない。たとえば「同一労働同一賃金」の導入に意欲を見せているが、これは100パーセント間違いだ。
日本でそれをやったらどうなるか。賃金が東京並みになったら、地方の会社は潰れるから事業をやめるしかない。地方が破壊されるばかりではない。雇用も失われる。

P19
今は世界のあらゆる国で「物言えば唇寒し」の状況が起きている。
日本においてはアベノミスクの矛盾が確実に顕在化する。

P277
単に歴史上稀に見る無能な大統領だったというだけではない。オバマ政権の八年間で、G1と呼ばれた世界最大最強の軍事力と経済力を持ち合わせたアメリカという国が急速に力を失いG0、つまりリーダーなき混沌、の象徴となってしまった。

P93
かつての東芝は不正会計が横行するような会社ではなかった。
田舎者の日立に対して、東芝は東京育ちのお坊ちゃんだからリスクを取るようには育っていない。それが仕事にも反映されて、どちらかといえばリスクを怖がるような臆病な体質の会社だった。

そんな東芝が変わってきたのは西田元社長あたりからで、「選択と集中」を盛んに言い始めたのだ。

経営資源を効果的に振り向けるという意味では「選択と集中」は重要な企業戦略のテーマである。しかし、一方で「選択と集中」から漏れた事業や社員をどう処遇していくかという重い課題がついて回る。

一方で、社会福祉や日本の国家債務の問題など、毎度のごとく、大前氏より提言されるにも関わらず、何の手も打てない政府に強い苛立ちも感じる。

政治家だけでなく国民までも、自分の代のことしか考えていないのだろうか。

P125
道州制のような新しい統治機構ができたタイミングで税制改革を行って、資産税と付加価値税の二本立てにするのだ。
資産税:(個人や法人の)固定資産や金融資産。5000兆円と見積もり
付加価値税:経済活動に伴って発生する付加価値に対して一律に課税。(例えば、消費税は最終的な消費にのみ課税されている。) GDP相当、500兆円と見積もり
所得税、法人税、相続税など全て必要なくなる。

P134
国の借金が増え続けているのに補正予算を組んで無駄使いを増やして、さらに増税を繰り延べしてどうするのか。ドイツあたりならそういう議論になって、必ずしも増税を延期した政府与党有利の選挙戦とはならない。だが、日本の国民はそこまで考えないで、自分の代に累が及ばなければいいと判断する。

以下、気になった文章をメモ

P22
日本人は勤勉な半面、仕事以外のことは任せて安心してしまう性向が強い。
人生設計というものを他人任せではなく、自分でコントロールできるように再構築しなければならない時代が確実にきていると思う。
サラリーマンであっても老後に備えてキャッシュフローを生み出すような事業を手がけることを真剣に考えるべきであろう。

P42
空いているものを取りまとめて有効活用する経済の新しいフレームワークが登場してきている。これはかなり本格的な変化であり、それらの経済現象を総称して、私は「アイドルエコノミー」と呼んでいる。

P124
人生最期の瞬間に「自分の人生は幸せだった」と思えるかどうかに、学歴や勤め先はあまり関係ない、本当に大事なのは人生最後の15年をどう過ごしたか、だ。

P136
政治家にとって重要なのは「将来に影響のある今日的な行動」である。
「核なき世界を目指そう」というメッセージを広島から発信することには大きな意味があるし、将来にも影響がある。

P141
人材がいて、彼らが必死に顧客のニーズに基づいた商品を開発し、必死にコストダウンして生産性を高め、必死になって販路を開拓する。会社とはそうした人の魂と情熱が幾重にも積み重なって成り立っている有機体である。

P150
政府は2016年4月1日の閣議で、「憲法九条は一切の核兵器の保有および使用を禁止しているわけではない」とする答弁書を決定した。
併せて、「非核三原則により、政策上の方針として一切の核兵器を保有しないという原則を堅持している」との見解を示した。

これまで政府は核兵器の保有は憲法九条に反しないという立場を取ってきた。しかし、安倍政権はさらに一歩踏み込んで、憲法の番人である内閣法性局長官に露払いさせたうえで、「核兵器の使用を含めて合憲」という立場を初めて示したのである。

P175
付き合って一番役立つ相手というのは、自分とはまったく違った発想をする人だ。それによって自分の発想力が磨かれるし、自分の論理に間違いがあれば気づく。

P179
ラテン語の「populus(人民)」を語源とするポピュリズムは、元来、既存の支配層や知識人などによるエリート主義を批判して、一般大衆の願望や不安、不満などの「実感
」を重視する政治思想、政治体制のことだ。

現代においては、ポピュリズムは大衆に迎合して人気を得ようとする「大衆迎合主義」というネガティブな意味で使われることが多い。

P186
聞こえのいいポピュリズムに引きずられた民主主義が行き着く先は、衆愚政治である。衆愚政治を避けるには、「me first(俺を先にしろ)」という考え方に染まらないことが重要だ。自分の損得ではなく、グループ全体にとって、コミュニティ全体にとっていいことなのか、悪いことなのかで判断する。自己中心なのではなく集団全体に重きを置く。個人よりも全体をよくしようと発想できる人が過半数いなければ、民主主義は成り立たない。

P195
今回の大統領選は何を明らかにしたかといえば、アメリカ政治の混乱状況である。政党が政党らしく、次の大統領の候補者を出しえていないのである。
アメリカが再び偉大な国を志向するなら、富を隠蔽している富裕層や金持ち企業からきちんと徴税する仕組みをつくらなければならない。これはサンダーズ氏の躍進というかたちで今回の大統領選で浮き彫りになった大きな問題である。

P199
日本の場合、国が破綻すれば地方も即破綻する運命にあるが、イタリアは国が破綻しても、グローバル産業をもっている地方都市は生き残れる。そのモデルを研究することは「地方創生」を掲げる今の日本にとって大いに意味がある。

P202
多くの地方都市に共通するのは「手広く」ではなく、「世界で一位」のものを一つだけ集中的につくっていることだ。そうすることによって市場(顧客)と直接会話できるし、価格決定力も維持できるからだ。

P262
なぜアメリカが同じ間違いを繰り返すのかといえば、彼らの中東政策は内政上ユダヤ勢力の支持を取り付けるためにイスラエルを守ること、そして石油権益を確保することしか眼中にないからだ。つまりイスラエルを脅かすアラブの独裁者はすべて”悪”であり、サウジアラビアは王政独裁ながら石油権益で結びついているから”悪”なのだ。

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