若手知事・市長が政治を変える -未来政治塾講義 Ⅰ –

滋賀県の嘉田由紀子知事が2012年に立ち上げた「未来政治塾」
30代、40代知事・市長とNPOの思いがつまっています。

【目次】

「今の政治に求められる政治家とは」
滋賀県知事 嘉田由紀子
「子どもの未来に責任を持てる政治を」
大阪府箕面市長 倉田哲郎
「人口減少時代にリスクテイクする自治体経営を」
千葉県千葉市長 熊谷俊人
「等身大の市長だからこそ、政治を変えられる」
兵庫県尼崎市長 稲村和美
「厳しい現実を市民と共有することから始めよう」
埼玉県和光市長 松本武洋
「政治家に必要なのは覚悟と志」
三重県知事 鈴木英敬
「若者が政治に参加するしかけをつくる」
NPO法人ドットジェイピー理事長 佐藤大吾

P10
20世紀型の、生産力を高め利益を配分する時代の政治から、21世紀に入って、社会保障の増大や環境問題、災害被害が深刻化するなかで、負担やリスクをいかに住民や納税者に受けとめてもうらうか、という負担配分社会になっています。

P110
拡大するパイの分配だけ考えていればいい時代はとうに終わり、いかに負担を分配しあい、リスクを負担しあうかということを真剣に考えなくてはならないという時代になったという点です。
こういう大きなパラダイムシフト、抜本的な転換が求められている時代には、市民の間でそういった共通認識や合意を形成していく手続きが非常に大事になってきます。安定的に成長している時代には、自分の知らないところで誰かが上手くやってくれるだろうと市民が市政に無関心でいても、実際上手くいっていたのです。

P145
最後に、今のままでやっていけるわけがないということをどう市民に伝えるかが現在の日本における政治の大切な仕事だと、私は思っています。これからの未来は、よほどのことがない限り必ずサービスは下がり、負担も増えます。

やはり、それぞれの市長が訴えていることは、今までの時代とこれからの時代が違うということ。私たち市民も、これまでと同じように政治に無関心でいるわけにはいかないことがよくわかります。

P61
社会の一般的な感覚から限りなくズレています。
一般社会を知らない人たち、男女が一緒に働き、女性の管理職がいることが信じられないような人たちが、私たちの税金の使い道を決めている。地方議員のバランスの偏りが、イーブンではない意思決定を招いているのですから、問題がでるに決まっています。

また、今までと同じような政治家選びをしていてもいけない。
とにかく若いこと、女性であること、多くの経験(政治屋ではない)をしていること。それだけでも、投票に値するようにも思います。

P42
選挙で一番訴えたのは「子育てしやすさ日本一の街にする」ということです。少子高齢化の問題は、高齢者の方々にとって住みやすい環境をつくれば解決するものではなくて、将来の担い手である子どもの人口を増やして、箕面市における人口構成比のバランスを立て直す、つまり支える下の層を分厚く強くしていかないといけないということです。

P44
箕面市では、ほかの市町村に先駆け、かなり早い段階で「子ども部」をつくりました。福祉部門が担当する保育所などの児童福祉と、教育委員会が担当する、幼稚園や就学前児童の教育、あるいは学校教育以外の子ども関係の部署をまとめて一つの部にしています。

P49
2011年に東日本大震災が起こった後、保育所を所管する厚生労働省と、幼稚園を所管する文部科学省から、各自治体にそれぞれお達しが来ました。
ところが、幼稚園と保育園でそれぞれお達しの中身が違うのです。子どもたちを帰すとかとどめるとか、どうすべきかといったことについて、言っていることが全然違う。それぞれの省庁がバラバラに考えているからです。
箕面市では、一本化する判断をしました。…

P81
私は、現在の保育支援システムに疑問を感じています。というのも、現状では、基本的にフルタイムで働いている人が、優先して子どもを預けられる形になっています。そのため「週三日だけ働きたい」「午前中だけ働きたい」という人は、子どもを預ける優先順位としては落ちてしまいます。
保育園に預けるために、あえてフルタイムで働くか、それとも働くことをあきらめるか。0か100かの社会になっていて、多様な働き方が許されていません。

P83
この国は、すべての意識を子育て支援政策に使わなければ、本当に未来がありません。

そして、子育て・教育。私たち子育て世代が変えなくて誰が変えてくれるのでしょう。

以下、気になった文章をメモ

P3
これからの日本社会再生のキー概念は、「全員参加型」の社会づくりと「地域社会」の活性化だと私は考えています。女性も若者も、障がいを持つ人も高齢者も、それぞれの意欲と能力を活かし、それぞれの居場所をつくり、仕事や社会活動での参加の機会を増やす。未来の方向性を共有しながら、日々の暮らしを背負う女性ならではの生活者の視点、未来に夢を託す若者の視点、大都市にはない地方の視点等を保管しながら、地域の環境、経済、文化、社会の自律を目指した地方自治が今、求められています。

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P14
実は、日本の法律はどれもそうです。計画をつくるばかりでやめる条項がありません。

P15
滋賀県は当時、国の直轄事業に約100億円の負担をすることになっていましたが、驚いたことに、請求書が紙切れ一枚なのです。

P16
私が議会で直轄負担金が問題だと言ったら、「国が自分でやってくれる事業になぜケチをつけるのか」と言われ、徹底的に叩かれました。

P20
中央集権よりも地方分権型の方が住民の命や環境を守れるということを、私は今回の3・11以降強く感じています。今滋賀県として、若狭湾岸の原発の再稼動に対して声をあげていますが、霞が関は何もわかってくれません。特に琵琶湖が万一放射性物質で汚れたら、関西1450万人の命の水源が汚れてしまうことなど、国では考えてくれる省庁も役人もいません。

P23
基本的に国の仕事は縦割り行政で、各省益でしか物事は進まず、総理大臣の命令もなかなか届かない、横つなぎができにくいしくみです。
地方自治あるいは地域主権改革、地方分権、これらをやらなければ、日本全体が制度疲労を起こすということに、今ようやく多くの人が気づき始めました。

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P38
市役所の窓口はもともと縦割りだったので、箕面市に引越ししてきた方々は、手続きするためにいくつもの課を回らなければなりませんでした。それを何とかしたいと思ったのです。

P53
国と地方行政、両方の仕事を経験してきて、地方公務員に欠落していると感じるものがあります。それは、「説明能力」です。組織内においても、市民に対してもです。

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P65
私が市長になって最初に取り組んだことは、財政改革です。というのも、千葉市はこれまで、政令市最悪の財政状態に陥っていました。
意外かもしれませんが、役所出身の人間の方がこうした事態に陥りやすい面もあります。役所出身の人間は自分で選挙ができず、「やってもらう選挙」だからです。
また、投票者は高齢者が中心なので、過剰な福祉が行われてきました。

P70
今の若い人たちというのは、どんどん勝ち逃げをされている世代になっている。
私は議員時代から、議会でこのことを言い続けてきました。名指しこそされませんでしたが、ある議員からは私を意識して「そういうことを言う人がいるが、我々はいいインフラを作ってあげたのだ。これからの世代にはむしろ感謝してもらいたいくらいだ」と言われたことがあります。
しかしそれは、たとえて言うなら、親が子どものために3階建ての家をつくって、ローンを払わずに「子どものためにすごい家を建ててやった」と自慢するようなものです。経済成長期に現役だった人たちには、これがわからない。

P77
市民サービスが過剰になっている自治体は、税金を払う側の市民に過剰な負担が強いられているか、もしくは本当に必要な分野に税金が使われていないかです。これからの時代、そういった税金の全体的な流れを知ったうえで、市民自身が「公務員を雇い、自ら経営しているんだ」という認識に立つことが大事だと思います。

P84
多くの人が行政について誤解している点について。
基本的に公務員というのは、選挙で選ばれた公職、つまり市長と議員に従う存在であって、独自の判断・決断は基本的にしないと決まっています。
もし何かあれば、行政がおかしくなった責任は首長・議会・議員にあるということです。市民にとっては議会が身近ではないため、市長と市の幹部が経営陣だと思っているかもしれませんが、実は議会が非常に重要なのです。

P87
本当に正すべきは、この国の選挙と国会のシステム

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P100
私は、今後もっとこういう等身大の人間が政治に関わらないといけないと心から思っています。政治のことだけを見ている特別な人たちが政治をやっている限り、政治は変わらないと思います。

P103
生活保護受給者は景気の悪化に伴っても急増していますが、根本的な原因は高齢化です。年金を十分に受給できない層の単身高齢者が、一定層どうしても生活保護になってしまいます。

P116
政権交代をしても変わらなかった日本は、地方からしか変えられないと、私は思っています。

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P123
子ども医療費の公費負担をどこまでやるかということがありました。街同士が子育て世代を取り合っている状況なので、ある程度は広げざるをえないのですが、子ども医療を無料にすることで、たとえばコンビニ受診がどんどん増えて地域の小児科医が疲弊します。そうなれば小児科医は街から逃げ出します。そこで悩んだ末に、子ども医療費の無料化は通院は小学校6年生までと決めました。

P133
そもそも和光市には、体質的に非常に大きな問題がありました。いろいろな料金を値上げをせずに放っておいた期間が長いということです。たとえば国保は十四年間、下水道は三〇年間、学童保育は二十八年間、保育所は二十三年間値上げせず、そのままにしていました。

P135
自治体の計画は、まず最初に、総合振興計画という10年プランがあって、その前期後期というプランニングがあります。さらに、多くの自治体はだいたい三年くらいの実施計画をつくってローリングしていくしくみです。

P141
アメリカの1州を除いたすべての州では支出と収入を均衡させた「均衡財政」をしなければならないということになっています。
その年の収入でその年の事業をしなければならないということが、憲法、あるいは州の法律に書き込まれています。これが欧米では常識になっていて、有効な数値目標や手続きを定めた法律を持っています。これを日本の自治体でもやるべきだと、私は考えています。

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P153
政治家を目指した一番大きな理由は、自分の省さえよければいいという官僚の省庁優先主義と政治家の堕落、これに対する怒りです。

P162
現場に行く、対話をする、信頼してもらう、そして、何かを決断し、実行する。そして、また現場に行く。このサイクルの繰り返しができるかどうかです。

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P182
NPO自体が寄付を集めていないことも大きな課題だと思います。現在、日本のNPOの最大のスポンサーは行政、つまりは税金です。

海外では事情が異なります。国民に、市民に対して、「寄付してください」と呼びかけるのです。
「一口寄付をしてくれたら、こんなサービをしますよ」「一〇口なら、こんなサービスもできます」などと戦略を立て、市民と向き合い、少しずつお金をかき集めて運営をしている。一口あたりの金額は少しずつでも、合わせれば大きな金額になります。

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